年別アーカイブ: 2012年

精油の選び方

お店では、たくさんの精油が販売されていますが、精油を選ぶときに最も大切なことは、それが芳香植物から抽出された、天然のものであることです。ポプリオイルなどと混同しないように注意します。
そのためにも、信頼できる店で、信頼できるメーカーのものを選びます。初めてなら、正しい知識をもったアドバイザーに相談するのがおすすめです。
自分で選ぶ場合には、品名、学名、抽出部位、抽出方法など、表示に最低限必要なことが書いてあるかをチェックします。また、「輸入元」や「取り扱い注意」もきちんと記載されているか、輸入品なら日本語表示がされているかも大切なポイントです。
精油のビンは遮光性のあるガラス製で、できれば1滴ずつ落とせる内ぶたがついているものがよでしょう。慣れないうちは、こうした製品を選ぶようにします。
店頭で香りを試すときは、ビンから直接香りを嗅がずに、空気に少し触れさせてから鼻先で香る程度にするか、ムエット(試香紙)につけて確かめます。
このときの香りが使用したときの香りに近くなるからです。精油にはたくさんの種類があり、香りも効果もさまざまで、選ぶのにとても迷います。

香りを心地よく感じることがアロマテラピーにおける重要課題ですから、明確な使用目的がないのなら、まずは自分の好きな香りを見つけて使ってみるといいでしょう。徐々にひとつひとつの精油の特徴がわかってきたら、2種3種とブレンドして効果を高めてくとよいでしょう。

精油とは

アロマテラピーの商品を販売しているお店では、香りのもとの成分になるものを「精油」という形で販売されています。小さな小瓶のようなところに香りの成分が入っている形なので、みたことがあるものになるかと思います。

精油(エッセンシャルオイル) は、芳香植物(ハーブ) がもつ有効成分が濃縮されて作られる、純度の高い物質です。水には溶けず、アルコールやオイル類などに溶けます。揮発性がとても高く、さまざまな特性をもつ複雑な化学物質を豊富に含んでいるのが特徴です。精油には芳香と薬効があり、フレグランスやフレーバー、医薬、農薬など幅広く使われます。また、芳香は人の鼻(喚覚) を通じて脳に働きかけ、心身の不調和を癒します。また、香りを嗅ぐことでリラックスしたり心地よい気分になります。

植物の中でハーブ(芳香植物)と呼ばれる約3500種類の中で、精油の採れる植物は約200種類。精油は植物の中の細胞組織内ゆほうの小さな袋(油嚢中) にしずくの形で存在し、花やつぽみ、枝葉、樹皮や樹脂、根など、あらゆる部位から抽出されます。

精油は、それぞれの植物の香りの本質ともいえるものです。古代エジプトやギリシャなど、昔から植物の芳香部分を医療や化粧などに利用してきました。やがて、13世紀頃に正式な蒸留法が成立して蒸留水が使用され、16世紀頃には精油を抽出する技術が確立しました。

植物から抽出される精油の量はとても少なく、そのため、たいへん価値のある高価なものとして扱われます。たとえば、1トンもののラベンダーからは約3Lしか精油が取れませんし、ローズの精油1滴を取るのに、約50本分のバラの花びらが必要とされます。精油は、お店でも割と高い値で販売されているものが多いのもこのためです。

精油は濃縮された香料原料といわれるものですから、必ず希釈して(薄めて) 使います。希釈度は1 %以下が理想的。低い濃度のほうが、高濃度より効果的な場合もあります。ひとつの精油だけでもいろいろな効果が期待できますが、数種類をブレンドすれば、さらに相乗効果がアップします。

アロマテラピーの歴史

「アロマテラピー」という言葉は、フランスの化学者により、1900年代に出版された『芳香療法』という本で広く知られるようになりました。
この書籍からもわかるように、植物がもつ香りの特性を日常生活に取り入れることは、古くから行われていました。古代から、香りは神からの授かりものとして考えられていたようで、宗教的な儀式の中で香木や花などが焚かれました。
古くは、紀元前300年頃までさかのぽります。古代エジプトではすでに、医療の目的や化粧品のために精油を利用していました。また、ミイラをつくるために、シダーウッドや投薬、ニッキなどを防腐剤として使っていました。パピルス文書によれば、乳香やオレガノ、コリアンダーといった芳香植物が香料として使用されてたことが確認されています。エジプトだけに限らず、メソポタミアやギリシャなどでも、宗教儀式や医療、装飾に芳香植物を利用していました。
インドでは、紀元前600年頃からアーユルヴェーダ(古代インド伝統医学) が成立し、今日まで継承されています。そして、有名な話ですが、紀元前100年頃にクレオパトラは、香料、とくにバラを好んで入浴や香水に使ったといわれています。西暦100年になって、ギリシャの医師600種以上の植物に関する『ギリシャ本草』を書いています。
1000年代には、アラブ人によって現在も使用されている抽出法、水蒸気蒸留法が発明され、1300年代には、イギリスでラベンダーが栽培され、芳香蒸留水であるラベンダーウオーターがポピュラーなものとなりました。
1300年代の頃から芳香植物を油に入れて加温し、その成分を浸出して使うようになります。その作り方や油を用いたマッサージ法は、現在のアロママッサージの標準となっています。また、アルコールを使ったローズマリーウォーター(化粧水の原点) は、ハンガリーの王妃エリザベートが高齢になってから、若返りの水として洗顔のときに愛用していたといわれます。1664 年、ロンドンでペストが大流行し、そのとき香料がもっている殺菌消毒効果が世の中に広く認められました。
やがて、多くの精油が科学的に研究され、ガットフォセが書いた『芳香療法』の登場となるわけですが、その間にも、民間療法として、薬草や芳香植物は一般の人に利用されてきました。18世紀のフランスでは、ニースを中心に香料産業が盛んになり、パリでは香水の人気に火がつきました。また、ヨーロッパでは、カルペパーやパーキンソンといった有名な薬草学者が活躍し、精油や芳香植物を利用した医療が盛んになりました。
19世紀になると、大きく進歩した西洋医学や薬学の影に隠れて、芳香植物を利用した療法は衰退しましたが、自然療法としてのアロマテラピーの価値を見いだす人々によって、再び世界に広がりはじめました。

日本にも1980年頃にアロマテラピーに関する本が登場しましたが、当初は、理解はされなかったようです。少しずつ、自然回帰の声の高まりとともに、じわじわと見直され、今日に至っています。日本にも苦から「香道」が存在しますし、平安時代には香りそのものを楽しむ遊びや、マナーとして香りを用いるということが行われていました。身近なところでは、菖蒲湯やゆず湯といった、民間に伝わる芳香植物との関わりがあります。現在は、欧米と同じように、純粋な精油やハーブを使ったアロマテラピーを、香りによるリラクゼーションの方法として日常生活に取り入れたり、専門家による研究も進められています。